「おまえってさ、六月十三日生まれだったよね?」 マッシロがいきなりそうやって聞いてきた。 「そうだけど。何、なんかくれんの」 「語呂合わせしたら、無意味の日になるなーって思って」 黒目がちの目を細めて屈託なく笑うマッシロを見ながら、バッカじゃねぇの、と俺は思った。 「バッカじゃねぇの」 頭に留めず吐き捨てるように言ってやった。そんなことを言われてどんな反応をするかな、と思って見ると、予想外なことにマッシロはヘラヘラと笑っていた。だから俺は拍子抜けする。それから苛立ちに任せて舌打ちした。そんな反応がほしかったわけじゃない。マッシロは俺の舌打ちも好きだという。品がなくて嫌そうで、いかにも舌打ちらしい舌打ちだからだそうだ。バカじゃねぇの。俺はマッシロに対していつもそう思う。 夏が始まる頃だった。似てない俺たちはふたりとも夏が好きだった。 欠落。 たぶん、その表現が一番しっくりくる。そう呼ぶのが正しいかどうかは知らないしわからない。 俺は、俺たちは、欠落していた。損なったり失ったり自ら捨てていたり、あるいは最初から欠如していたりした。でもそれを悲観してはいなかった。ジグソーパズルのピースみたいに、互いの足りない部分を互いで補いあえるとあの頃の俺は信じていたからだ。その確信がある限り、自分の空洞を恐れずにいられた。 でも、何度となく埋めたり埋められたりを繰り返すうちに気づかなきゃいけなかったんだ。俺たちは、自分の真ん中にぽっかり空いた寂しい場所のことを見て見ぬふりするべきじゃなかった。何もなくてもそれは俺の一部だったのだから。 でもとうとう俺にはできなかった。 塞がらないと知っていてもまるで空洞の存在なんて知らないかのように振る舞える器用さも、欠落を抱えてもなお地に足をつけて生きられるだけの余裕も、弱っちい俺は持ち合わせていなかった。強くなかった。だからせめて強いふりをしようとした。 でもそれさえうまくいかない。そんな日々を生きていた。 → |